ダイアリー






2025年06月07日


アテネで『ヴェンダースの友人』を観た。
均さんは、まだ若く、40代前半だろうか。
交差点の向こうから、カメラへ向かって横断歩道を駆けてくる姿は、妖精のようだった。
後のシーン、友人1・高岡氏との会話で天使の話題になるので、天使と評した方が良いのだろうが。

僕が均さんと出会ったのは、この撮影より後だ。
『のんきな姉さん』の試写後、まくし立てて(「お前の映画は誰にも似ていない」と)去って行った後、越川氏が「日本で一番映画を観ているかもしれないヴェンダースの友人」と説明してくれて、まだその時はこの作品を知らなかったので、?となった。
それから、断続的なつきあいが20年ほど。
今は、うちの近所に住んでいる。
だが、会うことは滅多にない。

映画はやはり、人間が見えるとき、心を揺さぶる。
20年近く経って、久々に観て、しみじみと良かった。
この作品が、井土の最良の映画ではないだろうか?
本人にもそれを伝えて、苦笑いされ、アテネを出た。

プロか素人かという問いがあった。
それがまだ問えるほどに、世界は清らかだった。
何者にもならない純粋が、ぎりぎり残されていた。
妖精は老境で何を思っているだろう。
僕も歳を取り、変わってしまった世界に戸惑うばかりだ。

いけすかない六本木ヒルズに来て、今、これを記している。
これから、「マシン・ラブ」の展示を見る。




2025年06月07日














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