年の瀬だというのに、というか、だからなのか、先立つものが乏しくて。 この窮状をなんとかせねば、と思っていた矢先に、渡りに舟。 いつもの構成仕事が、次々舞い込み、締め切りに追われる日々です。 ああ、うれしや、悲しや。
でも、こんな時だからこそ、映画を観なければ。 と、時間を見つけ、財布を覗いては、通っていたのが、山下耕作の特集上映。 私的裏テーマは、笠原和夫と野上龍雄が、それぞれ一人で書いた脚本を、 同じ監督の映画で見比べる、ということでして。 かつて新宿昭和館で観て以来の、『総長賭博』!という大傑作ゴールへ向けて、 恥ずかしながら初めて観る、『日本女侠伝』シリーズを中心に、せっせと足しげく。
で、ついにラス前。 この上なく素晴らしい映画に、出会ってしまったのです。 『女渡世人 おたの申します』!!!!!! くぅー。 観ているうちに、不覚にも、スクリーンと自分との距離感が取れなくなるほど。 こんなに陶酔したのは、久しぶりでした。 藤純子がいい! 文太もいい! 島田正吾も三益愛子も。 暗闇にひっそり身を沈めて、絵物語と向き合う、映画という作法の奥深さに、改めて感じ入りました。
でも、まあ。 相変わらず興味は、絵画にもありまして。 イモ洗い状態を覚悟して、フェルメールも行ってきました。 と言っても一度は、都美術館の前まで来て、あの尋常でない列に恐れをなし、引き返したりもしたのですが、日を改めて意を決して。 で、感想はというと。 ファブリティウスが見れたのは、良かったかな。 それにしても、フェルメールって、写真だとわからないんですが、実物を見ると、なんであんなに時期によって筆遣いが違うんですかね。 「リュートを調弦する女」はグッときましたが、他はなんだか、マユツバに思えてしまいます。
な〜んてことを、こないだ、ある美術家と食事をする機会に、ポロッと言ったら、 「なんで、そんなにたくさん、いろいろ観に行くんですか?」と驚かれてしまいました。 その驚き方があまりに屈託なくて、僕は一瞬たじろいでしまったのですが。
だってそれは、問われること自体、不思議なぐらい当たり前のことで。 可能な限り、見て、聞いて、読んで。 目や耳や脳内を鍛えて、何が本当にいいものなのか、凄い、素晴らしい表現なのかを知ることは、己の至らなさを知ることであり、自らを成長させ、より高く飛ぼうとするために必要な、基本中の基本なのではないか。 だから、そんな質問なのか感想なのかを口にしてしまうことは、恥ずかしいことだ。 と気付かないことが、恥ずかしくなくなくない?
と思ったりもしたのですが、すぐに口に出たのは、 「いやあ〜、ただのオタクなんですよ。 はははっ」。 なんともかとも。 弱いというか、情けないというか。 ま、僕はそんなもんですわ。
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