10月もいろいろ大変でした… って、もう、11月も半ばですよね。 先月と同じ言い訳になっておりますが、ひと月遅れの月記を記します。
札幌に行きました。 二、三日ですが、6年ぶりのことで。 久々の街を訪れるというのは、それだけで気持ちが盛り上がるものですが、 今回は、その6年前の上映で 『眠り姫』 を観た(かつての)高校生が、 どうしてももう一度観たくて、仲間たちと開いたという上映会で。 いやあ、それだけでもう感激! 東京では16度目のアンコールだし、今年は京都や名古屋でも再映あったし。 まったくあの作品は、物語とは裏腹に、実に幸せな映画ですなあ。 ちょうど札幌は紅葉の季節で、赤や黄色に街路樹が色づき、とても美しく。 うきうきと、犬のようにあちこち歩き回りました。 ああ、楽しかった。
10月は私、誕生日の月で。 まあ、この歳にもなると嬉しいというよりは、大体ため息なのですが、 でも偶然、その日に書きとめておきたいことがありました。 お名前は伏せますが、敬愛するある映画監督の方が治らないガンになったと ちょうど夏前ぐらいのことですが、知らされまして。 御歳や普段のありようからして、然もありなんとは思えども、 うーん、それでもやっぱり落ち込んでしまって。 直前にたまたま観劇した、飴屋さんの 『教室』 が何度も何度も思い返されたり。 あれ、あの、お父さんの遺灰を骨壺からザッと机の上に移して、 フライドチキンにかぶりついて、チキンの骨を放り出し、 どうして、この骨はゴミ箱に捨てて、人間の骨はお墓に入れるのか、わからない、 僕にはどうしてもわからないんです、と声を荒げるところ。 いや、そこだけではもちろんないですが、凄い劇だったなあ、 生と死と、性と詩と。 いろいろ綯い交ぜになりながら、夏から秋へとへヴィに過ごしました。
と、誕生日の朝、電話が鳴りまして。 どうやら抗ガン剤治療が功を奏し、癌は緩解したと。 監督ご本人からそう聞いて、ぱあっと心が晴れて、思わずこう言ってしまったのでした。 「ありがとうございます、夏からずっと憂鬱でした」 と。 電話を切ってから、ハタと間違いに気づきまして。 言葉が違うでしょ、それ言うなら、 「おめでとうございます、ずっと心配しておりました」 でしょ。 心の底から出た言葉だから、なおのこと、つくづく思ったのです。 自分ってやつは、どこまでも自己中心的に考えるものだなと。 そして、そんなにまでもそのことが、他人事になんか思うことできず、心に影を差していたんだなと。 で、思い出したのは、最近とある映画のアフター・トークで、柴田元幸先生から、 「本当に正直な人なんですね(=嘘がつけないんですね)」 と、まじまじと言われたこと。 ふー。 いくつになったら、大人になれるんでしょ?
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