ストーリー







そこに樹があった。

パジャマ姿の青地(つぐみ)が眩しそうにカーテンをめくる。もう陽も高い。中学校の非常勤教師をしている彼女は、このごろ学校に行くのがおっくうで、いくら寝ても寝不足の感じが抜けない。長くつきあい過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、好きだという気持ちも、すでにおぼろになっている。繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ、奇妙な夢。どうも、何かが変だ。

学校の風景、職員室、グラウンド、生徒たちの声 …

職員室では、面長の同僚教師・野口(西島秀俊)が、自分の顔のことは棚に上げて、青地の顔をだんだん膨らんでいると笑う。野口は青地のことを心配しているのだろうか、それともからかっているのだろうか。帰宅すれば、トイレに貼った猫の写真が、何か言いたげにこちらを見ている。
いま出てきたトイレの中に、誰かがいるような気がしてならない…。

青地は繰り返し、同じような夢を見る… 階段からピンポン玉が落ちていく。そして、誰かの手…
荒涼とした風景の中を歩いている女性 ── これは自分なのか …

久しぶりに会った女友達も、彼氏も、青地のことを「この頃、変だ」と言っている。
そこはかとない現実への違和感が、青地の心を占め始める …

青地は誰かに助けを求めていた。偶然ファミレスで会ったことをきっかけに、青地と野口は二人っきりで会って話をするようになる。
会うたびに痩せていく野口。「眠り薬のせいですよ」と、野口は言う。
野口の様子が普通ではなくなっていく … 











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