ダイアリー






2013年11月29日


暮れが近づいてきました。
毎年この時期になると、『眠り姫』 を撮っていて、
朝な夕なに空を見上げていたときのことを思い出します。
ちょうど10年前の今ごろ、ふと思い立ち、あんなことを始めていなければ、
僕はどうなっていたんだろうなあ。

十年経って、十、歳を重ねて。
なあんにも変わってないなあとも思うし、
それなりに10年分の経験を通して見えてきた、見えてしまったこともあるから、
あの頃とは決定的に変わってしまったところもあるのだろう。

それは、周りの人々もそうなのであって、
同じような顔をしていても、その人なりに10年間の人生があったのだから、
昔と、ちょっと違うことになっていても不思議ではない。
そういうのって、案外、自分では気づけないものなのかも。

人間って煩わしいなあ。
と、人のいない夜明けを眺めていたときのことを思い出してしまいます。

でも、あのときもそうだったのですが、
落とし前もつけられないような人間には、なりたくない。
それだけは、全く変わらないのですよ。
のんきなんですけどね。




2013年10月29日


ふがいない、と自ら切り出すことが、
意外に免罪符となり、自分を甘やかすことに繋がりかねない、
とはいえ、やはり、
私としては、その言葉で振り返らざるを得ない、先日のイベント。
ご来場、ご清聴いただいたみなさまに、
まずは深く感謝を申し上げます。

実際、直前までどう話すか、どこまで話すか、
悩んで、結論の出ないままに、
酒の勢いで、カオスをぶつけるしかなかったそのわけは、
二部構成の後半で取り上げた、ある無名にあらざる男の死が、
頭をもたげたということに尽きるのです。

私はかつて、辺境の一例として挙げた、
まだ均質な情報が世界を覆う以前の、大学の映画サークルで、
チーフという役職を担わされ、毎週ある曜日の夜に、
ミーティングと称して、勝手に占拠した教室で、
勝手な8?上映会や、映画にまつわる青臭い独演会を開いておりました。
それは、バブルの時代のシラケた雰囲気の中にも、
なんとなく、純や熱がにじんでしまう、今思えば赤面な会でして、
その中に、飛んでしまったあの男も、つまらなそうな顔して、確かに座っていた。
あれから20年以上が経ち、何もかも変わってしまったし、何も変わらないままだけど、
このどうしようもない状況で、私は映画に向き合っていく。
と言うほど、格好良くはいかないけれど。
でもそれしか、あいつが置いていった“残尿感”に、応える術がない。

だから、こないだ話し損ねた、イベントの本題についても、
いずれ必ず、リベンジいたします。
みなさま、どうぞよろしく。




2013年10月12日


ご無沙汰しておりました。
2カ月以上のブランクは、ひょっとしたら、この日記を始めて最長かもしれません。
日記って、書くほどのことが無ければ書く気になりませんが、
逆に、目まぐるしく様々なことが起き過ぎても、
記す機会を失うものですね。
って、ただの筆不精の言い訳に過ぎませんが。

つい先日、引っ越しまして。
と言っても、隣町へほんの1〜2?移動しただけなのですが。
それでも、最寄り駅が変わると、こんなに気分一新するものなんですね。
僕は、上京してから四半世紀以上、とある駅の周りに住んでいまして。
ここ15年くらいは、同じ丁目内の移動しかしてなかったので、
なんか、年甲斐もなくワクワクしてしまいまして。
移動を終えた日、晴天に恵まれた爽やかな空の下、
用もなく、ぐるぐる自転車を転がして、
「あ、良さげな居酒屋だ」 「こんなとこに、立ち呑み屋が」
「う、ここはサッポロラガーがあるな」 と。
まあ、呑み屋の物色ばかりですが、とっても楽しいひと時を過ごしまして。

いやあ、それにしても、大変な引っ越しでした。
取り壊しによる立ち退きで。
もちろん、ずいぶん前から通達はあったのですが、
その期限の時期は、いろいろな事情で無理だから延ばしてくれと、
不動産屋には、ちゃんと伝えていたはずでして。
その事情の一つである、映画祭参加のための渡航の10日ほど前になって、
突然、大家から、もうすぐ解体業者が入るがいつ出てくれるのだと、
いきなり言われ…。
渡航直前の時間のない中、まあ、決断しまして。
長年住み慣れた町ではあるのですが、昨今の変容ぶりは、あまり好ましく思っておらず、
この際、いい機会だと思って、距離を置くことにしたのです。
で、帰国早々、荷物をまとめて出はしたのですが、最後まで大騒動。
引越しの当日に、びっくりですが、解体業者を入れられて。
荷物の運び出しと、建物の囲い込みが並行作業。
いやあ、荒っぽいことする大家さんです。
まあ、諸悪の根源は、仲介業務を怠った不動産屋の無責任ですが、
うーん、何というか、世の中ささくれ立ってきている表れの一端でしょうか?
昔はもっと、人情味のある町だったような気がするのですが。

年々歳々、町も、人の心も移り変わるなあと、
そんなことを思った出来事が、もう一つ。

これまた、つい先日。
とある新作映画の、初日打ち上げに参加しまして。
酒席のことではあるのですが、ある先輩監督にからまれました。
まあ、昔から彼の酒癖は、良い方ではなかったのですが、
なんか言っていることが無茶苦茶で。
僕は、「表現から逃げている」 のだそうです。

彼が言うには、
「劇映画」 とは、顔を撮ってドラマを描くものであり、
顔を映さない映画など、表現からの逃避に過ぎない、と。
そこで、こう言い返しました。
確かに僕は、あなたが言う意味での 「劇映画」 だけを作る作家ではないのだろう。
けれども、表現から逃げて作品を作ったことは一度もない。
なぜなら、もっと広い意味での映画と格闘しているのだから、と。

すると、彼は、
どうしてお前は、そんなに頑ななのだ、
お前のやっていることは表現から逃げているだけだ!
と、何度も何度も頭ごなしに言うのでした。
それは、もう、パワハラか?と思うほど。
まあ、作家の信条は、どんなものであれ自由ですが、
それを押し付けられたら、たまったものじゃない。
だから、頭に来て、問いました。
ならばあなたは、あなたが考えている 「劇映画」 以外の映画、
例えば、ドキュメンタリーとか、実験映画とか、アニメーションとかは、
表現からの逃げに過ぎないと思っているのか、と。
そうしたら、彼は、
実験映画とかドキュメンタリーのことはよく知らない。
でも、「劇映画」 の方が、表現として上だと思っている。
と、堂々と言い切ったのでした。

僕は、耳を疑いました。
そして悲しくなって、何も言い返せなくなってしまいました。
実際、もう、涙が出そうでした。(我慢したけど)
かつては僕は、彼を敬愛し、その映画作りを支えた一員でした。
(もう15年以上前のことですが)
酔っているとはいえ、そんな偏狭なことを言うような人になっていたなんて、
いったいどういうことなんでしょう?
表現が強くあるには、作家の強い信念が必要です。
しかし、信念を言葉にするのは非常に難しい。
それは、強く言えばいいというものでは、断じてないのです。
もしかして、今彼は、どこか追い詰められている心境なのだろうかと、
後からふと思い、心配になりもしました。
その場で、一部始終を黙って聞いていた、
打ち上げの主役である老監督は、最後にひとこと言いました。
「もう、帰ろう」 。

で。
顔の映らない映画 『眠り姫』 は、
本日12(土)から18(金)まで一週間、@渋谷アップリンクで、
おかげさまで14度目のアンコール上映を迎えます。
今回は、顔は映るが声のない 『ホッテントットエプロン‐スケッチ』 も、
制作途上の新作 『To the light (in progress)』 とともに再映されます。
僕らが本当に、表現から逃げているかどうか、とくと御覧あれ。

それから。
顔も声も無い、人類滅亡後の世界を描いた映画 『DUBHOUSE』 が、
今、ヨーロッパで最も先鋭的と評されている25FPS国際映画祭で、
グランプリと審査員特別賞をダブル受賞しました。
謹んで御報告いたします。




2013年07月31日


この日記の表題は、なんてことない日々をつづる、などとのたまっていますが、
それにしても、書くほどのこともない日々が、延々と続いて。
で、気がつけば、7月も今日で終わり。
町を歩けば、子供連れの親たちがそこかしこに。
そうか、夏休みなんだなあ。

こちとら、夏休みの自由研究を、いつまでも出せないままに、
四十も半ばまでやり過ごしてしまったような人生で。
いい歳して、何やってんだろ、俺。
今さら、自分探しもないだろうとか思いつつも、
なんかそんな心境で、
うだる蒸す夏にまいってます。
あ〜あ。




2013年06月25日


最近は、観る映画にとても恵まれています。
昨日も、『We can’t go home again』 を。
あんなに実験的な手法を取りながら、こんなに心震わせ泣かせる映画って、あったでしょうか?
アナログなマルチ・プロジェクションの端々に、ニックの魂が刻印されていて、もう圧倒的で。
観終わってから、何度も、何度もタイトルを口走り、
「僕らに帰る場所は、もうないんだあ〜」 と、朝まで呑み続けてしまいました。

そう言えば、爆音でやっていたチミノの 『ディアハンター』 も凄かった。
若い頃に観たときは、有名なロシアン・ルーレットのシーンばかりが強烈で、
デニーロがクリストファー・ウォーケンを探しに、陥落寸前のサイゴンへ戻る、
あの喪失感は、本当のところ分っていなかった。
再見してまず度肝を抜かれたのは、前半延々と一時間近く続く結婚パーティのシーン。
多幸感あふれる圧巻の演出があればこそ、彼らロシア移民にとってのベトナム戦争が、
深く切なく突き刺さってくるのだよなあ。
田舎町のカワイ子ちゃんを演じたメリル・ストリープの、
鈍い色気が、身悶えするほど素敵でした。

大阪では、中村登にびっくりして。
京都に行ったついでに、挨拶がてら寄ったシネヌーヴォで、特集上映が組まれていたのですが、
こんな異様な作品を撮る人だったとは知らなんだ。
『二十一歳の父』 で不気味に響く夜のヘリコプター、『ボロ屋の春秋』 の狂気のスラップスティック。
『古都』 とか 『紀ノ川』 とか、文芸物の監督だというくらいの印象しかなかったのは、
つまり、若い頃って映画観たって、ホント何も見えてないものですね

他にも、ヴェーラで再見した 『やくざ絶唱』 とか。
昔観たときに、素晴らしい!と感激したものでさえ、
齢を重ねて見直すと、感心する度合いや箇所が新たに深まると言いますか。
これだから、映画を観ることはたぶん死ぬまで、
僕の人生から外せないだろうと、つくづく思います。

まあ、そんな発見の日々の中で、とりわけ興味深く、意義深かったのが、
手前味噌で恐縮ですが、京都での、拙作のアクースモニウム上映でしょうか。
映画をアクースマティック化して演奏してもらい、上映するという構想は、
実は去年から、密かに温めていた企画でして。
それが先日ついに実現したのは、同志社寒梅館のプログラマー、多朱さんの卓見。
しかし何と言っても、日本で唯一のプロフェッショナルなアクースモニウムの演奏家、
檜垣智也さんの繊細に繰り出される音の空間配置の技は、もはや名人芸!
それは、軽々しく立体音響などと言える簡単なものではなく、
サウンドトラックにすでにある、声、物音、音楽の一音一音がブラッシュ・アップされ、
さまざまな表情を帯びて、空間を飛び交う魔術!!
満員御礼、立ち見まで出たホールの片隅で、高揚しながらじっと耳を澄まし、
全くもって、しびれっ放しでした。

電子音楽研究の川崎弘二さんからも、貴重な話をいろいろ聞けたし、
やはり、打ち上げは一軒目では終われず。
深酒をして朝方、友人が定宿にしているという三条のサウナで仮眠をして。
目覚めて表に出れば、小雨振る梅雨空。
台風の影響という大風に時おりあおられながら、京都の町をとぼとぼ歩き、思いました。
昨今、どんどん大味になっていく世間の傾向、趣向に反するような、
こういうナイーブなイベントをやれて、本当に良かったなあ、と。





2013年05月27日


書かないままにずるずると、気づけばもう、五月も終わり。
あわてて筆を執った次第です。
最近は、別に取り立てて忙しいわけではありません。
慌ただしかった時期も過ぎ、
また平々凡々、とくに何ということもなく日々を送っております。
一昨日の沖島さんの新作試写後の呑みの席で、鎮西さんが
「陰々滅々とした日々」 とのたまっておられましたが、
まあ、私の方もそんな感じ。
というか、そうして過ごしている方は、けっこう多いのではないでしょうか。
新作 「Who is that man ?」 はまさにそんな時代状況を活写した、悩み多き映画でした。
居酒屋のトイレで連れションになり、思わずぼそり、
「ゆるぎない思想家だと思っていた沖島さんに、今回初めて、混乱を見ました」
と話しかけるでもなく呟くと、沖島さんは手を洗いながら、
「そーなんだよね」 と、はにかむように笑いました。
あの男は誰だ? それは私(たち)の分身だ。
ポレポレ東中野で今秋公開、みなさま、座してお待ちください。

ああ、それにしても、もうひと月が経つのだなあ。
ドイツのビールは安くて美味かった。
言葉が通じる日本に戻ってきて、しばらく深く感じ続けた妙なガッカリ感。
あれは、ビールの味というわけでは、なかったはずです。




2013年04月19日


なんともはや、慌ただしい日々を送っております。
『眠り姫』 のアンコール楽日の翌日から、特集上映のために名古屋へ行き。
そうこうしているうちに、以前、『ホッテントット』 を上映してくれた、
ヨーロピアン・メディアアート・フェスティバル(EMAF)から、『DUB』 を上映したいとの連絡が舞い込み。
苦手な英語のやり取りを、友人に助けてもらいながら、ひーひー続けて。
いよいよ来週、初めてのドイツ、ガイドブックにも載っていない町、オスナブリュックへ行って参ります。
日本からの参加はまったく一人、通訳もガイドもいないし、ああ、冒険です。

そんなこんなで、このひと月余り、ろくに映画も観れていないのですが、
それでもなんとか時間を作って観た作品が、とても心に残るものばかりだったのは、幸い。
まずは、なんと言っても、牧野くんの上映会。
自分の名前に映画祭と付けてしまうあたりの不敵さが、相変わらずで、微笑ましく。
でも、それだけの気概を見せつけるのが、彼の凄いところですね。
新作PVの、薄い皮膜のかかったような水面のヴィジョンは、
この世のものではないような美しさを湛えていました。

それから、『食卓の肖像』。
実に、真摯な映画でした。
公害という問題はすべからく永年の問題として、生涯、代々、人々を苦しめていくという重いテーマを、
飾らず、ひたむきに、一人一人と向き合いながら、記録し続けてきたその誠実さが、
随所ににじみ出ていて、心打たれました。
それは、金子サトシ監督が、映画と人生に、いかに真摯に向き合っているかの
表れだろうと思います。
そんふうにグッときてしまっていたからか、上映後のトークが残念でした。
金子さんがあんなに真摯に、ゲストの方の質問に答えているのに、
司会の方のあの不埒な態度は、ちょっと、いかんなあー。
ちょいと不愉快になってしまいました。
まあ、人前に出て呑んだくれている私には、何も言えないですが。





2013年03月30日


はや3月も末、更新しないまま、ひと月も経ってしまいました。
年々歳々、いやあ、ほんとに月日の過ぎるスピードが速すぎて…
と、言い訳にもなりませんね。
相変わらずの筆不精、あわせる顔もございません。(ネットですが)

このひと月以上を振り返ると、実にいろいろなことがありまして。
大阪上映に立ち会った数日間なんて、めっちゃ楽しくて!
調子に乗って、京都まで足を延ばし、
寝ている時間以外はほとんど、アルコールを口にしているという始末。
付き合って下さった友人知人、劇場スタッフのみなさま、
本当にありがとうございました!
もちろん、映画を観に来て下さった方々に、一番の感謝を申し上げます。
その上映とオーヴァーラップするように、
ヒカリエイガなるものにも、関わることになったりして、只今鋭意奮闘中でもあり。
映画や芝居やライブもいろいろ、刺激を受け、
日記に書くべきことは、あまたあったにもかかわらず、
うーん、どうにも筆を執ることができず、いや書こうとはしていたものの、
どうにもなんとも進まなかったのは、ある訃報が原因なのかも。
「亡くなった」と聞くより、「亡くなっていた」と知ることの方が、
動揺が静かに、深く沁みてくるものなのですね。
椅子の上に立つのも、ヒューヒュー騒いでたヤツが、7階に住むんじゃねえよ!
学生時代から借りっぱなしの回転イス、もう返せなくなっちゃったじゃねえか。
六畳一間で、暑い暑いと団扇をあおいでた夏のころ、
ぶかぶかのトランクスからはみ出していたお前の横金が、不意に思い出されて、
忘れられない。
酔い醒め飛行、バッドテイスト。

本日より、『眠り姫』13回めのアンコール上映、よろしくお願いいたします。




2013年02月18日


新宿Ksシネマでの アンコールレイトショー、おかげさまで好評のうちに終了しました。
ご来場のみなさま、関係者の御協力、誠にありがとうございました!
個人的には、帰国直後の時差ボケの中で始まった上映期間、
ちょいちょい劇場に顔出しながらも、観たい映画やイベントにあちこち参加して、
実に楽しく、有意義に過ごさせていただきました。

中でも、アテネで連チャンだった各氏の講演は、どれも刺激的で。
リュック・ムレ 『ビリー・ザ・キッドの冒険』 は、脳内スパークするほど凄い映画だったし。
ノワール特集の大盛況は、こんなアテネ、十年振り!というぐらいの立ち見で、仰天したし。
とりわけ鮮烈だったのは、ゴダール『映画史』 「1A・1B論」 の平倉圭氏。
もうすでに、演台にPCをセッティングしているときから、ただ者ではないオーラを発していて。
おそらく絵画の図像分析を援用した、フレーム単位の画面分析で、
難解な 『映画史』 を鮮やかに解読していくさまは、実に独創的。
顔面カットが爆発的に連鎖していくタイムラインを、
狂気にとり憑かれた男の連想、そして妄想 と喝破する平倉氏の、
ときおり見せる不敵な笑顔が、まさに狂っていて、チャーミングで、しびれました。

しびれたと言えば、ベン・リヴァース 『湖畔の二年間』。
あそこまで作り込んでいながら、飄々と適当を装う 品の良さに、
自ずと 「映画以後」 という言葉が浮かび、
「映画以内」 で勝負を挑む人々との立ち位置の違いに、つくづく感心させられたなー。
恵比寿映像祭では他に、〈アニメーションと日記〉 プログラムで観た
『キープ・ミー・アップライト』 の 少女の痛ましさが天才的で、これはもう、生理的にツボ。
で、『ホーリー・モータース』 は、何と言っても ドニ・ラヴァンが圧巻。
やはり、怪物ですね。
唯一無二な あの存在が、カラックスという作家を生み出したのかも。
すみだトリフォニーホールでは、鈴木治行氏の 「句読点」 シリーズ全曲演奏会。
?脱臼す、る時間?と副題にあるからか、ふと、
モンティ・パイソンが現代音楽だったらこうなるのではと、何故か思い。
一方 ここ数日は、筒美京平の歌謡曲選集を、昔ダビングしまくったMDで聞きまくり…。

いやはや、支離滅裂で、落ち着きなく。
いい歳して、学生みたいですね。
書いてしまった後で何ですが、全くお恥ずかしい限りです。




2013年02月05日


この年齢にして、初めての海外旅行。
オランダから帰ってきました。
いやあ、本当に楽しかった!
言葉が分からないって、すごく自由になれるんだなあ、と。
逆説的ですが、そんな気分です。
英語が話せないから、知ってる単語を並べるしかないんですが、
もうそれは、スリルとサスペンスの連続。
意図が伝わった時の興奮と喜びは、日本語の会話では味わえない、何というか素朴な感動があって。
同じく映画祭に参加していた牧野君には、
「日に日に、若返っていきますねえ」 と、冷やかされたり。
いやはや、どこから誰が見ても、映画祭を楽しみまくっている人、丸出しでした。
それもこれも、ロッテルダムにたどり着いた初日に、事務所の入口が分からず うろうろしてたところを、
声掛けてくれた、香港生まれでブリスベン在住のオードレイのおかげ。
何を話しかけられたかも分からず、必死に言葉を返したことで、吹っ切れて。
以後は、どこかで顔合わせれば言葉を交わすようになり、
そんな相手が、少しばかしですが増えていき…。
でも、正直に告白すれば、ヒアリングがダメだから、何言ってんだか全く分からなかったんですけどね。
エイガとエイゴに浸る一週間余りでした。
ああ、英語しゃべれるようになりたいなあ。

というわけで、帰国して。
早々に、おかげさまで、新宿Ksシネマでのアンコール・レイトショー始まりました!
海外では Experimental Film maker (実験映画作家)として認められちゃった
私の初めての実験?映画 『DUBHOUSE』
どうぞ御高覧下さいー。





2013年01月20日


寒中見舞い申し上げます。
こないだの雪、久々にすごかったですね。
あの日以来、風邪で寝込んでおりまして。
そう言えば、年末は、ひどく虫歯に痛めつけられ。
折しも、アルコールなしではいられぬ時節柄、
神経抜いては酒を呑み、抗生物質を出されてはまた呑んで、もうボロボロ。
いやはや、この風邪も、大雪の日に出歩いたからというより、長年の不摂生がたたってのことなのか。
まあ、ようやく床を抜け出せたので、何とか大丈夫ですが。
遅ればせながら、みなさま、本年もよろしくお願いいたします。
今年こそは、養生に努めたいと思います。
とかなんとか、書いてみたりして。

そんなこんなで、日記をサボっていたひと月余り。
何やかやで、映画はあまり観れなかったのですが、
それでも、ファスビンダーの三本は、完走しまして。
若い時分はよく分からなかったのですが、四十五にして観るに、
これだけの人間観炸裂したドラマを、三十代で連発した早熟に、改めて畏れおののいたというか。
とくに 『ローラ』 の、えげつなく辛辣で透徹した社会認識は、簡潔かつ圧倒的でした。
で、早熟と言えば、ミア・ハンセン・ラブの新作。
まだ3作目だというのに、この堂に入った名作っぷりはなんでしょう?
前作 『あの夏の子供たち』 も、観た後で二十代の作家と知り、びっくりしましたが、
今作にも通底する、懐かしさと新しさが入り混じるこの感じ、
活きのいい完成された彼女の作風には、
80年代に、ホウ・シャオシェンを初めて観たときのような、興奮と感動を覚えました。
素晴らしい!

ところで、この一カ月の間には、
またしても、縁ある方の悲報があり、沈みました。
『のんき』 でお世話になった、佐藤允さん。
実は、梓さんと同じ頃に亡くなっていたと知った時は、しばし言葉を失くしましたが、
それから程なく伝わった、大島渚監督の訃報にも、言葉にならないショックを受けました。
その動揺は、ちょっと不思議な感じで、特別なものでした。
動揺の大きさに、動揺したというか…。
大島渚はずっと、テレビの向こうに見る、あるいは活字で知る存在だったし。
もちろん、主要な作品は全て観ていますが、
誤解を恐れず言えば、特に影響を受けたというわけでもないし。
しかし、十六歳の僕を、初めて世に送り出してくれたのは、
紛れもなく、大島監督だったわけで。
もし、あの8?映画を 彼が選ばなかったら、僕は、違う道を歩んだかもしれない。
そして、あのときの少年が、その後(ずいぶん経ってから)映画界の片隅で助監督をやり始め、
さらに時を経て、細々と作品を発表し出したということを、ついぞ知らせる(知られる)ことはなく、
その機会は、永遠に失われたのだなあ、と。
あえて説明すれば、そんなことなのかもしれませんが、うーん、分からない。
大きくて、遠い、喪失感。
風邪で寝床に伏せながら、不思議な動揺を胸に抱く日々でした。

さてさて。
新宿Ksシネマさんが、『DUBHOUSE』 のアンコール上映をやってくれることになりました!!
2月2(土)から連日21時、2週間のレイトショー。
(併映は、『夢で逢えたら』 と 『Aspen』。日曜と水曜は、『のんきな姉さん』 を上映します)
というのは、もうご存知の方も多いでしょうが、
『DUB』 が、今週開催のロッテルダム国際映画祭で上映されることになりまして。
てなわけで、オランダ、
行ってきます〜












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